略歴

これまでの研究概要

研究業績

  原著論文(査読あり)  
1, 河内香織(2002)「渓流における生葉の分解過程とシュレッダーの定着」日本生態学会誌, 日本生態学会誌編集委員会52: 331-342.

2, Kaori KochiSeiji YanaiAkiko Nagasaka (2004)Energy input from a riparian forest into a forested headwater stream in Hokkaido, Japan Achiv fur HydrobiologieStuttgart 160: 231-246.

3,下田和孝,中島美由紀,柳井清治,河内香織,伊藤絹子(2004)「陸上植物からサクラマス幼魚への物質移動経路」魚類学雑誌,日本魚類学会編集委員会51: 123-134.

4Kaori Kochi & Takashi Kagaya (2005)Green leaves enhance the growth and development of a stream macroinvertebrate shredder when senescent leaves are availableFreshwater Biology50: 656-667.

5Seiji Yanai & Kaori Kochi (2005)Effects of salmon carcasses on experimental stream ecosystems in Hokkaido, Japan Ecological ResearchSpringer 20: 471-480.

6,下田和孝,中島美由紀,伊藤富子,河内香織,柳井清治,伊藤絹子(2005)「サクラマスの生活史ステージの進展に伴う安定同位体比の変化」日本生態学会誌,55: 371-376.

7Kaori Kochi & Seiji Yanai (2006)Shredder colonization and decomposition of green and senescent leaves during summer in a headwater stream in northern Japan Ecological Research 21: 544-550.

8, Kaori Kochi & Seiji Yanai (2006) 「Decomposition of leaves in coastal brackish water and their use by the macroinvertebrate Anisogammarus pugettensis (Gammaridea)」 Marine and Freshwater Research 57: 545-551.

9,柳井清治、河内香織、伊藤絹子(2006)「北海道東部河川におけるシロザケの死骸が森林生態系に及ぼす影響」応用生態工学会誌 9: 167-178.


10,Kaori Kochi, Izumi Sakurai & Seiji Yanai (2007)Role of forest-origin coarse  particulate organic matter for the brackish water amphipod Anisogammarus  pugettensisBulletin of the Japanese Society of Fisheries Oceanography 71-4: 255-262.

11, Kaori Kochi, Takashi Asaeda, Takeyoshi Chibana, Takeshi Fujino (2009) Physical factors affecting the distribution of leaf litter patches in streams: comparison of green and senescent leaves in a step-pool streambedDOI: 10.1007/s10750-009-9756-2, Hydrobiologia 628:191?201.

12, Kaori Kochi, Akiko Nagasaka, Yoshio Mishima (2010) Lateral input of particulate organic matter and sediments from bank slopes surpasses direct litter fall in the uppermost reaches of a headwater stream in Hokkaido, JapanLimnology.11:77- 84. DOI: 10.1007/s10201-009-0290-8.

13, 白川北斗 ・柳井清治 河内香織 (2010)「カワヤツメ幼生の生息地選択性は成長段階によって変化する」応用生態工学会誌12: 87-98.

14,Kaori Kochi, Takashi Kagaya, Dai Kusumoto (2010)Does mixing of senescent and green leaves result in nonadditive effects on leaf decomposition?Journal of the North American Benthological Society. 29:454-464.

15, 知花武佳・河内香織・渡辺尚基(2010)「山間部河道に見られる有機物の堆積場とその形成機構」土木学会論文集,66: 179-188

16, 小林草平河内香織・加賀谷隆 (2011)「河川上流における落葉枝リターの時空間分布:底生動物の侵入定着の観点から」日本生態学会誌,61: 33-43

査読無し
1,下田和孝,中島美由紀,伊藤富子,柳井清治,河内香織,伊藤絹子「森林からサクラマ幼魚への物質移動経路の推定」20033月平成12-14年度重点領域特別研究報告書pp60.

2,長坂晶子,柳井清治,河内香織「海岸山地小渓流における渓床貯留有機物の量的・質的季節変化」20033月平成12-14年度重点領域特別研究報告書pp42-50.

3,長坂晶子,河内香織,柳井清治,長坂有,小野寺賢介「海岸山地小渓流における有機物動態と源流域の果たす役割」20033月平成12-14年度重点領域特別研究報告書pp8-28.

4河内香織「河川を介してつながる森林と海洋沿岸域の生態学的関係の解明」平成14年度笹川科学研究助成研究報告書,研究番号14-374M

5河内香織「森林で生産された落葉が沿岸の漁業資源に与える影響」20053月,ノーステック財団研究開発助成事業2004研究成果報告書pp39.

6河内香織外来植物ハリエンジュ(ニセアカシア)が河川内の腐食連鎖に与える影響の評価」2006年度河川整備基金助成研究成果報告書,研究番号18-1215-1

7河内香織,知花武佳「ダムから流下した土砂と有機物がダム下流に生息する水生昆虫と魚類に与える複合的影響の解明」ダム水源地環境整備センター生態研究助成2007-002号報告書

8河内香織「温暖化による環境変動が河川及び陸域分解系に与える影響の評価」2008年度実績報告書

9河内香織 特集「河川における粒状有機物の移動と水生生物による利用-河川上流から沿岸海域における各場の特性と共通点」趣旨説明.日本生態学会誌,201161: 31-32

10,加賀谷隆・河内香織 特集「河川における粒状有機物の移動と水生生物による利用-河川上流から沿岸海域における各場の特性と共通点」特集を終えて.日本生態学会誌,201161: 71-74.

著書
1
,著書名「River FutureGary Brierley and Kirstie Fryirs (Editors) ISLAND PRESS Washington, DC, CALIFORNIA Chapter 12 ?Japanese experiences - Light and dark of dammed rivers. 著者:Marutani T., Kikuchi S., Yanai S. and Kochi K. pp220-236, 2008

2,著書名「水産学シリーズ157 森川海のつながりと河口・沿岸域の生物生産」日本水産学会監修,山下洋,田中克編 U森と海のつながり-森林で生産された有機物の河川・沿岸域への供給過程」著者:長坂晶子,河内香織,柳井誠治,恒星社厚生閣 pp59-73, 2008

3,著書名「ニセアカシアの生態学」文一総合出版,崎尾均編「ニセアカシアの侵入が渓流生態系に与える影響-腐食連鎖の視点から」著者:河内香織,20094

4,著書名 「生態系の環境」浅枝隆編集 朝倉書店 20114pp133コラムISBN 978-4-254-18034-3 C3040

受賞
1,2006年度「信州フィールド科学賞」受賞(信州大学山岳科学総合研究所主催)
対象となる研究課題「山岳森林域における渓流生態系および物質循環に関する研究」

2
2006”International Conference of Landscape and Ecological Engineering”
優秀ポスター発表賞受賞
Kaori Kochi, Seiji YanaiYoshio MishimaToshikazu Taoka
Movement and decomposition of salmon carcass,and its effects on natural stream ecosystem in central Hokkaido, northern JapanJapan Osaka.



ひとこと

子供たちが大きくなった時の地球環境がとても気になります。
子供がのびのびと外で遊んでいるのが日常の光景であるように、研究の面から何か貢献したいと思っています。

私は,日本の河川上流域において渓畔林から渓流に落下する有機物の多様性と分解,河川における有機物の移動と森林と沿岸海域間の物質循環に興味を持って研究を進めてきました.

@森林生態系と渓流生態系の相互作用に関する研究では,資源流入のタイミングに着目し,渓畔から渓流内に落下する有機物の量と種類,炭素・窒素量を調査し(論文2,12),このうち,強風や樹種特性などで落下する生葉の分解過程について,底生動物による被食を中心に調査を行った.その結果,緑葉には多数の底生動物が定着し,底生動物による緑葉の摂食活動は盛んで,今まで国内外の実験から得られた落葉期の落葉の分解速度と比較すると,分解速度が非常に速いことを明らかにした(論文1).また,樹種によって緑葉の分解速度は異なり,葉の窒素含有量や硬さなどの化学的,物理的な特徴が影響している可能性を提示した.さらに,生葉の窒素含有量の高さは葉を直接摂食する水生動物のみならず間接的に利用する種にも影響を与える可能性があることを示した(論文7).落葉期以外の渓畔林から渓流への生葉流入により資源に多様性が生じ,水中での分解速度にも影響を及ぼすことを明らかにした(論文14).
A水中での有機物移動に関する研究では,野外調査と水路実験から,樹種によって葉の沈みやすさには違いがあり,葉の持つ特徴と物理環境が水中での落葉の滞留場所に影響していることを明らかにした(論文11,15).
B河川上流域と沿岸海域の物質循環に関する研究では,森林河川において上流から流下した落葉が,沿岸に生息するヨコエビの食物資源として働いていることを飼育実験と安定同位体分析手法を用いて明らかにした(論文8).また,流下した落葉や枝などと枯死した海藻が,捕食者であるカレイ幼魚からのヨコエビの避難場所として働いていることを水槽を用いた実験から明らかにした(論文10).一方,海域から河川上流に移動する資源としてサケが挙げられる.河川上流域において遡上したサケの死骸由来の養分(窒素)が河川に生息する底生動物や草本に取り込まれていることを,安定同位体手法を用いて明らかにした(論文5,9).また,サケの死骸に発信機をとりつけ,経過時間ごとの死骸の移動を調査した.その結果,一部のサケの死骸は森林の奥まで移動されることを明らかにした.移動は哺乳動物によると考えられる.サケ以外には,北海道で資源が減っているカワヤツメに焦点をあて,その幼生の生息場所の調査と飼育実験から,落葉由来の底泥が堆積するような緩流部がカワヤツメの生息場所には重要であり,河川構造の多様性の重要性を明らかにした(論文13).